
未来の購買体験
- 商業施設
- ECモール開発

オムニチャネル推進グループ主事
2018年に三井不動産に総合職掌として新卒入社。総務部文書グループに配属され、株主総会や取締役会の運営等の業務に従事。2021年10月に現部署に異動となり、&mallのUIUX・マーケティング等の運営業務に従事。2022年より本格的に&mallリニューアルプロジェクトに参画。

オムニチャネル開発グループ兼
DX二部 DXグループ
エンジニアリングリーダー
2016年に大手航空会社に新卒入社し、航空券購入サイトのシステム企画や開発工程のプロジェクト管理に従事。2022年に三井不動産にエキスパート職掌(IT系)として中途入社し、入社当初より&mallリニューアルプロジェクトに参画。2025年4月からは商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部主務となり、ビジネスサイドからDX推進に携わる。
「&mall」は、リアル施設とデジタルを融合させた新たな購買体験を提供するECモールだ。2024年に全面リニューアルを果たし、2025年3月にはアウトレットECサイト「三井アウトレットパーク オンライン」をオープンした。DX本部と商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部が連携して推進したものであり、三井不動産のDX推進の象徴ともいえるプロジェクトだ。
リアル施設の力を活かしたECモールの挑戦
&mallは、「リアル施設共生型ECモール」として2017年にオープンした。
山田(商業施設運営一部 オムニチャネル推進グループ 主事)※以下山田:
&mallの最大の魅力は、リアルとデジタルがシームレスにつながることによって生まれる新しいサービスや利便性です。お客様には、オンラインで注文した商品を当社施設にて無料で受け取ったり、その場で返品できたりする点を特に支持いただいています。一方、テナント様にとっても、当社施設の店舗在庫をECで販売できることで売上機会が広がるなど、リアルとオンラインの強みを活かせる仕組みとなっています。今後も、両者が補完し合い、相乗効果を最大化できるような真の「リアル・デジタルの融合体験」を目指して進化を続けていきます。

ゼロからの再構築で未来を切り拓く、“共創”の力
コロナ禍を経てより一層多様化する購買行動に応えていくため、商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部とDX本部がタッグを組み、ゼロからのシステム再構築に挑戦することとなった。
陳(商業施設運営一部 オムニチャネル開発グループ兼 DX二部 DXグループ エンジニアリングリーダー)※以下陳:
今回の開発では、機能ごとにマイクロサービス化し、それらをAPIで接続するアーキテクチャを採用しました。マルチベンダー体制で進める中で、インターフェース定義のすり合わせに想定以上の時間を要しましたし、仕様合意後にも認識のズレによる考慮漏れが見つかり、仕様変更を余儀なくされる場面もたびたびありました。そこで私たちは、仕様調整から合意までのスピードと品質を両立させるために、当社がベンダー間の橋渡し役として仕様調整をリードする体制を取りました。調整は困難を極めましたが、スピードと品質の両面で確かな改善につなげることができたと感じています。

プロジェクト成功の鍵は、総合職とエキスパート職の連携
総合職は、テナントや顧客の多様な要望を丁寧に汲み取り、プロジェクト全体の方向性を定め、推進する役割を担う。各種要件が過度に複雑化しないよう調整を行い、可能な限りシンプルな形で実現できるような工夫が重要となってくる。
山田:テナント様ごとに異なる粒度や内容の連携データへの対応は難易度が高く、また、長期にわたるプロジェクトの中で変更となったUIやUXへの対応にも苦戦しました。要望が多岐にわたる中で、現行システムでの検証や効果の確認を重ねつつ、スケジュールやコスト、売上や運用面など様々な観点から要件を整理し、優先順位をつけて、できるだけシンプルかつ実効性のある形で実装していくことを意識していました。DX本部のメンバーや現場の運用を担うグループ会社、ベンダー各社とも密に連携し、複数の選択肢を持ちながらスピード感を持って意思決定を重ねていきました。
エキスパート職は、複雑な要件を可能な限り受け入れつつ、システムには汎用的なロジック・構造で落とし込めるような調整が求められる。
陳:今回のプロジェクトは、当社としてもこれまでにあまり前例のない規模のシステム開発だったため、適切な開発標準もないなかで、手探りで全体設計から進める必要がありました。さらに、プライムベンダーを置かないマルチベンダー体制だったこともあり、各社の担当領域をまたぐ仕様やスケジュールの整合性、粒度のばらつきといった点に対して、私たちDX本部が積極的に介入して全体最適を図る必要がありました。
具体的には、画面デザインや処理タイミングに関わる業務影響が想定される場合には、事業部(※オーナーサイドの部門のことを指す。ここでは商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部のこと)と密に連携して影響範囲と対応案をすり合わせたうえでシステムへ反映するようにしました。また、ベンダー各社への依頼時には、伝達内容に曖昧さや漏れが出ないよう、依頼事項を詳細かつ具体的に記述するなど、プロジェクト全体の品質と効率の両立を意識して対応していました。
総合職とエキスパート職は、それぞれ異なる立場に立ちながらも、プロジェクトの成功に向けて歩み寄りを続けている。この“共創”の姿勢こそが、三井不動産のDXプロジェクトを成功に導く鍵である。
山田:DX本部のメンバーと事業部の私たちが、それぞれの立場を越えて理解し合い、協力しようとする姿勢を持てていたことが、プロジェクト成功の大きな要因だったと感じています。ただ「できる・できない」のやり取りをするのではなく、なぜその要望があるのか、その背景にある課題は何かといった本質に向き合いながら、日々コミュニケーションを重ねていきました。その中で徐々に信頼関係が築かれ、判断のスピードや質にも良い影響が出ていたと思います。
また、私はもともとシステムに関する知識があまりなかったため、当初は開発に対してハードルの高さを感じていましたが、今回のプロジェクトを通して、どう伝えればDX本部やベンダーの皆さんにとって検討しやすいか、進めやすいかを考えるようになりました。システムか不動産かという違いはありますが、相手の視点を持って対話することの大切さは、どんな業務でも変わらないと実感しました。
陳:プロジェクトに関わるメンバー一人ひとりが、必ずやり遂げようという強い責任感を持っていたことが、チーム全体の推進力になっていたと思います。異なる部門が連携していくうえで、関係者全員が同じ目標に向かって進もうという意識を共有できていたことが大きく、プロジェクト終盤の受入テスト(UAT)で多くの課題が見つかった際も、リリースに向けて限られた時間のなかで何を優先すべきか、迅速に議論・判断し、実行に移すことができました。部門を越えて、同じゴールに向かう一体感があったからこそ、乗り越えられたと感じています。

次なる挑戦へ、“共創”の力を胸に
プロジェクトは無事にローンチを迎え、アウトレットECは順調な滑り出しを見せている。また、2025年4月より&mallプロジェクトに参画するエキスパート職は商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部所属となり、事業部サイドで支援を続けていくことになる。
陳:これまでは、ある程度事業部側で検討が進んだ段階でシステム化の相談が来ることが多かったのですが、事業部所属となり、企画の構想段階から関与できるようになったことで、「ITの力で何が実現できるか」という視点でのアドバイスや発想の支援ができるようになったと感じています。
同じ部署で机を並べることで、事業サイドとも気軽にやり取りができるようになり、アイデアの検討・実現までのサイクルも早くなってきていると思います。今後はデジタル分野の専門家として、より多くの案件を経験しながらスキルの幅を広げ、将来的には事業を横断したBtoCサービスの開発にもチャレンジしていきたいです。
山田:陳さんの言うとおり、システム面での実装だけでなく、構想・企画の段階から積極的に関わってもらうことで、事業部側だけでは出せなかったような視点やアイデアを期待しています。また、これまでは主に「&mall」だった担当領域が広がったことで、複数のシステムを横断した視点から、全体最適や新たな企画提案も一緒に考えてもらえたらと思っています。
今後も、DX本部と事業部が一体となり、さらなる価値創出に向けて挑戦を続けていく。
三井不動産のDXは、“共創”から生まれているのである。